道東カーボンファーミング研究会 2025年度活動報告
- Shin Tainaka
- 10月27日
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更新日:11月5日
『土からつながる、持続可能な食の未来』
2025年度は多様な酪農スタイルに合わせた炭素循環型農業(カーボンファーミング)の実証を継続して進めています。また今年度からは土壌改良に加え、農の未来を支える若い人材を育てる活動も開始しました。
■ 2025年度活動 途中報告:多様な酪農モデルに対応した3つの実証
本研究会は3年目を迎え、2024年度よりスタートした酪農規模に応じたカーボンファーミング手法について、それぞれの有効性を確認する長期的な検証を始めています。
1. 大規模農場:中山牧場(別海町)
乳牛1,300頭を飼育する大規模酪農。バイオガス発電を自社所有し、大量飼育の牛から出る糞尿をエネルギー源とするなど循環資源として使い切る農業を実践。実証では不耕起圃場での堆肥、消化液を使った慣行農法での炭素貯留と微生物活性の長期観測を実施。
「毎日の糞尿処理を“資源循環”として見直すと、酪農のあり方が変わる。不耕起による小豆とデントコーンの輪作にチャレンジするなど慣行農法をベースに多様な農業の可能性を追求したい。」−中山勝志(有限会社中山牧場会長、道東カーボンファーミング研究会会長)
2. 中規模農場:リジッドファームズ(北海道野付郡別海町中春別)
今年度から研究会に参加した乳牛100〜300頭を飼育する中規模酪農家。有機JASの取得経験もある。本実証においては有機栽培で運用してきた実験農場を使い、化学肥料を使用する区とスラリーを散布する区に分けた比較調査を実施。
「最も軒数が多く、そして最も多くの課題を抱えているのが、私たち中規模農家。サステナブルな農業と、収量が多く品質が高い飼料生産の両立が重要となっている。カーボンファーミングへの挑戦を自己成長の機会と捉え、今回の実証に参加した。」— 森田哲司(株式会社リジッドファームズ代表)
3. 小規模農場:養老牛山本牧場(北海道標津郡中標津町養老牛)
約30頭を完全放牧で飼育する圃場で2024年度に引き続きカバークロップ(混播草地)の播種による土壌構造改善の検証。2025年度は播種の種類を増やし、牧草地へのカバークロップ定着を目指している。「完全放牧で牛を育てている当牧場では圃場全体を賄う糞尿は手に入らない。放牧地にいろんな植物を蒔くことで、土中に根が張り、土が生き返る。小さな牧場でも、大きな牧場でも目指す方向性は同じである。」— 山本照二(養老牛山本牧場代表)
■2025年10月9日〜11日、3年目となる土壌健康度調査を実施
調査対象の圃場を試験区に分け、それぞれに応じた施肥やカバークロップ等の農法を行いました。春季調査(本年6月)に土壌サンプルを採取した圃場と同地点で分析⽤サンプルを再度採取。春から秋にかけて炭素貯留量、微生物総量など⼟壌健康度の変化を観察し、各農法の効果測定を行います。土壌分析調査と実証成果は来年2月頃、発表の予定です。

■若い世代とともに、“土から変えていく農業”を学ぶ
また今年度から高校生・大学生が現地での調査や土壌観察に参加し、「土壌が温室効果ガスを貯留する仕組み」や「持続可能な酪農の循環構造」を学ぶ教育プログラムを開始しました。11月には私立新渡戸文化高等学校(東京都中野区、校長 小倉良之)のスタディツアーを受け入れ、事前事後学習も含めた探究学習のフィールドとしてカーボンファーミングの試験圃場他で実習を行う予定です。今後、道東をフィールドにして学んだZ世代からのサステナブルな酪農への転換へのアイデアや提言も発信していきたいと思います。